「平成娘巡礼記 四国八十八ヵ所歩きへんろ」 月岡由紀子

昔、知ってるつもり!!で、最後の瞽女小林ハルさんが紹介された回を見たことがある。瞽女とは、少しでも光が見える人を先頭に肩に手をかけ、数人のグループで全国の農村を歌い歩いたという盲目の女性旅芸人集団のこと。昭和30年代まで最後の瞽女として歌い続けていたという小林さんの生涯は、同じく知ってるつもり!!で見た中村久子さんの生涯と並んで、自分の中に強く印象づけられた。

その瞽女唄を現代に受け継ぐ、恐らく唯一の三味線奏者、月岡祐紀子さんが24の若い身空で、四国八十八ヵ所霊場を歩いて巡礼した記録がこの本である。24なんて年で、どうして八十八ヵ所巡り??しかも、歩き遍路なんて…三味線奏者という肩書きに思わず納得しそうになるけど、やっぱり疑問は拭えない。そこを、巻頭、脚本家の早坂暁さんが、瞽女の歴史や100年前に同じ24歳で八十八ヵ所をまわった高群逸枝さんの話を引きながら書いた文章からして、思わず目頭が熱くなってくる。

もともと、こういう旅行記は好きな人なのだ。とくに若い人の貧乏旅行記は、各地での人との出会いがより強い感じがして好きだった。見知らぬ土地での見知らぬ人たちとの偶然の出会い、そして温かい交流。自分が、人との繋がりが限りなく薄い都市生活者だからこそ、そういう温かい交流を求めてるのだ。

月岡さんの遍路旅でも、数多くの出会いと別れが描かれている。同じ歩き遍路の人たちとの出会い、そして、お接待という古くからの習慣を通しての道沿いの人たちとの出会い。一つ一つが温かく、一つ一つがかけがえない。まさに一期一会な二ヶ月間の記録。

こんな温かい人たちが、まだこの日本にいるんだなぁという感激 (^^;; が、本のあちこちでこみ上げる。もちろん、そんな人たちはいっぱいいるんだけど、普段の生活では出逢うことはほとんどない。旅人という人たちだけに許された特権なのだ。そういう出会いは人を癒し、人を強くするらしい。大学生から年老いた人まで、心を病んだ人から会社をリストラされた人まで、お四国病院と呼ばれる遍路道へとやってくる。若い人が多いことが、一瞬、意外に思えたけど、自分みたいな人が多いことを思うと、なぜか納得できてしまった。

そして、いつか巡礼の旅に出たくなった。