今日の読了

72. ◎ "博士の愛した数式" 小川洋子

あまりにベストセラーだったので敬遠していたけども、読んでみると、なかなか、というか、かなりいい話だった。女性作家の作品ということで、二人の女性の二つの形の恋が主軸に描かれていたようだ。囚われつづける想いとリセットされつづける想い。特殊な状況の博士を巡って、一方は次第に募っていき、他方は次第に顕わになっていく。アルジャーノンのチャーリー、またはいくつかの梶尾作品のように、限られた時間、流れない時間、繰り返される時間、そんな時間の檻に捕らわれた物語は必然的にリリカルになってしまうんだと改めて感じた。