「賢者はベンチで思索する」 近藤史恵

あらすじ

専門学校は出たが、やりたい仕事が見つからないままにファミレスバイトのフリーターを続ける主人公(女性)が、ファミレス常連の老人といっしょに解決する3つの事件。老人と出会って事件を解決する中で、彼女と弟との、そして家族との関係も少しずつ変化していく。老人のいない3番目の事件で、真の解決を果たした彼女が知ったものは…。

感想

加納朋子に比べて近藤史恵の作品には、今ひとつイメージが湧かない(これと言った作品が思い出せない)のだけど、そういう意味ではこの作品も、そういう今ひとつな感じが拭えない。この作品の雰囲気は、加納朋子ユートピア的日常ミステリとは違って、もう少し現実味があるというか、そこそこの悪意も存在する小説世界である。しかし逆に、全体の枠組みが現実によってしまうと、この小説の世界を現実から浮き上がらせる、特徴づける要素が薄くなってしまい、この手の日常ミステリとしては弱いものとなってしまう感じがする。つまり、いい話を読んだ程度の感想で終わってしまうような。