「Q&A」 恩田陸

一体何が起きたか分からない状況から、対話を繰り返していく中で事件の全体像を浮かび上がらせていく様は上手いなぁと感じた。しかし、その全体像もある肝心の一点だけは最後まで明快に語られない。
何故、誰のせい。人為的な(に見える)事件の肝心の部分をはぐらかしたまま、逆に関係者、被害者の心の闇を明らかにしていく対話の数々。加害者という属性が、群集の中に拡散してしまったかのような薄気味悪さだけが増幅されていく構造になっている。

関心空間でも誰かが書いていたが、恩田陸はもっとぼんやりした世界、現実のこの世界とはわずかにずれたvagueな世界を描く作家だと思っていたが、この小説は確かに現実のこの世界の1シーンでありえると感じた。途中で、「あれ、恩田陸の小説を読んでたんだっけ」と思ってしまったほどだ。今、思えば、そのぼんやり曖昧化する手腕は世界観とは別の部分で発揮されていたというわけか。

この小説は、それぞれの対話が誰と誰で行われているかに始まり、どの人とどの人がどういう繋がりになっているかまで、かなり作りこんだ構成になっているような気がする。最後の対話がああいう形になっているのも、ある明確な意図の下で行われているような気がしてならない。確かな根拠があるわけではなく、単なる「気がする」程度なのだが。

いろいろな読み方ができる小説だろう。

メモ