「空の境界」上下 奈須きのこ

辛かったけど、ようやく読み終えた。
長大な駄作と言っては言いすぎだろうけど、もっとうまい書き方あるだろうにとツッコみたくなる部分がほぼ全編に渡ってありまくりで、正直、最初のあたりから読む気力が萎えてしまっていた。

ダメなところ

  • 文章が下手 : まぁ、最近のモノ書きには文章が下手な人は多いから、小説としては致命的ではないんでしょうね…。自分としても、小説として面白ければ、文章の巧拙はあんまり問わないんだけど。
  • 会話が不自然 : 登場人物が小説の設定を説明するかのような台詞が多く、しかも長いわりには発話者の心情が伝わってもいない。下手な脚本を下手な役者が演じているみたいだったり、全く異質な会話文化を持った平行世界の人々を見ているような、微妙な違和感を感じる台詞・会話が繰り広げられる…
  • 構成がイマイチ : 各章ではそれぞれ、ある境界(条件)を隔てて両儀式と対峙する存在との対決(?)が描かれていく。ただ、その個々の存在(敵)の間の「意味」のつながりが感じらない(荒耶に利用されたというつながりはあるのだが)ので、週替わりで怪人が登場しつづけるヒーロー物みたいな単調さを感じた。まぁ、5章だったか、荒耶との対決というクライマックス(だったんだよね?)は、それなりに楽しんだんだけどなぁ。
  • 異界の現出が容易すぎ : 異界を現出させるにはやはりそれなりの手順を踏む必要がある(京極堂あたりも言いそうな話だが)。それなりの道具立て、雰囲気作りをした上で、ようやく周囲も納得して異界が出現すると思うんだよね(平たく言えば集団催眠にはムードが大事)。魔術の呪文も圧縮詠唱しちゃいかんのだ。ところが、この小説の場合はそれが軽い気がするんだよね。特に女子高の章とか。まぁ、そういう軽い、ライトノベルな伝奇小説というコンセプトだから、それが特徴の一つでもあるのだろうけど、どうもね…。

というわけで、一番面白かったのは、上巻の笠井潔の解説。