「少女には向かない職業」桜庭一樹

一人の少女が、一人の少女に出会って、二人の大人を殺す話。
ライトノベル作家が「満を持して放つ初の一般向け作品」とのことだけど、悪い意味でのライトノベル臭さが抜けない小説だったというのが感想。この人の他のライトノベルジャンル作品の方は面白いのだろうか(「ブルースカイ」は買ってた。まだ読んでないけど)。
思うに、ミステリ・フロンティアシリーズの中で刊行されているんだから、もう少し、「ミステリ」に気を払っても良かったんじゃないだろうか。この作品の場合、章題(「…と静香は言った」)は、そういう点を意識しているかのように思えるのにも関わらず、ミステリ的味付けはあくまで「ふたりの少女の壮絶な《闘い》」(紹介文より)のための、おざなりな設定にすぎなかったような気がする。もちろん、中学生の普通な少女の犯罪なんて、ちゃちなのは当然なので、そのちゃちさがおざなりだと言うわけではない。そんなちゃちな犯罪の上に乗っかからざるを得ない、二人の少女の苦しみをもっとうまく描けば、そのちゃちさにも大きな意味が与えられたんじゃないかと思う。そんなちゃちな犯罪が、ただそこにあるだけ、という状態なのがおざなりだと感じられた。
さらには、二人の動機=苦しみも、どこか中途半端というか、その苦しみの激しさが伝わらなかった。島という閉塞空間に生き、広く社会との接点のない中学生という立場の主人公たちにおいて、その主人公の抱える苦しみはまだ納得できるのだが、出会われた少女の側の、虚構で構成しなければならなかった苦しみについては、その実態も、はたまたその外縁でさえも、結局は語られぬまま終わった感がする。島の中の旧家という二重に閉じ込められた少女という特性を活用すれば、もっと面白い描き方もできたんじゃないかと思うのだが。
こないだ、生天目仁美のラジオにこの作家が出ていたのだけど、女性だったんだね。この本を買ったときまでは、この作家、男性かと思っていた。