「ささらさや」 加納朋子

加納朋子にしてはちょっとイマイチ。というよりも、たぶん、読者の性別を選ぶのかも。やはり母親向きか。
自分は、主人公のあまりの弱さ(でも、ときどき加納朋子的人物のしたたかさが現れる)にやや辟易。そうなると、他の登場人物のステレオタイプさも逆にマイナスポイント。
直前に読んだ「月曜日の水玉模様」と「螺旋階段のアリス」はもっとミステリ色を全面に出していて(でも加納朋子的な)面白かったんだけどね。「月曜日」と「アリス」は、主人公女性のタイプとしては全くの対極にあるけれど、どちらもそれぞれ魅力的。この二人のように、社会的には弱い一介の普通の女性が、それほど派手な立ち回りをすることなく、けどもスマートに、何気ない日常の謎を解きほぐすってのが、この作者の持ち味だと思う。
ところが、「ささらさや」は弱さだけ(というわけでもないんだけどね)。まぁ、流れ的には弱い女性が母親としての強さを持ち始めるまでを描いてはいるんだけど、それに対して自分は入り込めなかった。