「半島を出よ」上下 村上龍

あらすじ:北朝鮮ゲリラが福岡ドームを占拠、合流部隊とともに福岡市を統治しはじめる。それに対して、日本政府は九州を封鎖する以外にアクションを取れず、結局、福岡を解放したのは…。
かなり緻密に描きこまれていて近未来SFとして面白い作品だった。日本政府の弱腰な対応は、いかにもありそうな感じもするが、さすがにそこまで無能・無策ではないだろうという気もする(淡い期待か)。
そういう危機管理小説的な側面がある一方、「7人のおたく」的というか、特殊技能を持った素人がプロに挑む様を描く側面もあって、そちらもある種の痛快さを感じさせて面白い。ただ、破壊衝動しか感じないはずの彼らが、それが目的ではないにせよ、結局、日本を救ってしまうことになるのは、最後の最後での善玉転向のようでいささか拍子抜けに感じた面もあった。そういう性向の彼らであるなら、逆に物語としてのカタストロフを犠牲にしてでも、もっとどうしようもない結末を迎えるのが本当ではなかったかと思う(読後感もどうしようもなく悪くなるだろうけど)。