「富豪刑事の囮」(「富豪刑事」 筒井康隆 より)

深田恭子主演のドラマ第1回の原作。ドラマでの犯人候補は3人で、うち一人はすぐに殺されて容疑者から外された。結局、発明家の幡野の、環境運動家の須田が残っていたが、最後の部分の録画に失敗して犯人が分からないままになってしまった。
一方、原作では、発明家、インテリ労働者、射撃マニア、バーテンの4人が候補で、4人ともパーティに招待される。ドラマではもう初老だった鈴江さんが、原作ではまだ20代の若い女性で、パーティに招待された4人に代わる代わる話しかけては誕生日のプレゼントをねだる。そのおねだりに4者4様の対応をするのだが、結果、ある一人が隠していた5億円に手をつけて御用。
ドラマの結末を知ることができるかと思って原作を読んでみたのだけど、原作を読んだからと言って、ドラマの結末が分かるというものではなかった。この作品は、ミステリと言っても、犯人推理の情報がフェアに提示されているわけではなく、あくまで富豪が刑事だったらどんな推理や捜査方法が可能かという点を描いたものだから。そういう点では、「富豪刑事の囮」のメインの部分は、金に糸目をつけずに豪勢なパーティを開くというところだったようだ。ちょっと拍子抜けな気分。
ただ、神戸刑事が4人と接触するシーンや鈴江さんが4人と話をするシーンの描き方が、場面切り替えを明示しないように(説明しづらい)なっていて、筒井康隆らしさを感じた。昔は筒井作品が好きで、ほとんど読んでた(富豪刑事もずいぶん昔に読んだはず)のだけど、最近はかなりご無沙汰してたからね、ちょっと懐かしかった。