ローゼンメイデン #11「運命」、#12「真紅」

最終話では、真紅の声にいつもと違う変化が見られて、クライマックスにふさわしい雰囲気を盛り上げるのに一役買ってた。いつもの澄ました声と打って変わってジュンにかける声にもどことなく優しげな雰囲気が現れていたし、腕が取れてジャンクになってしまったというショックに泣き叫ぶ様子には真紅の「人間らしさ」を垣間見た気がする。完璧な人間、完璧なドールがいないように、真紅にも普段の仮面とは違う弱さがあったということだ。
その一方で、この最終話での主役はやはり水銀燈だったなとも思う。ジャンクとして生まれてきた我が身を呪い、恥じつつも、自分を造った「お父さま」の愛に飢え、他の姉妹を毀つことで自分への関心を得ようとする水銀燈。ある意味、彼女が一番、人間に近い苦悩を抱えていたように思える。ドールはその本性からして愛されることを宿命付けられている以上、欠陥品として生まれて愛を受けないということは、水銀燈があれほど狂信的に姉妹を追い回す要因になったことも肯ける気がする。水銀燈が最後、青い炎に焼かれ、ジャンクの体を露わにしながら「お父さま」への想いを訴えるのは哀しいシーンだった。自分の本心、弱さをこうして露わにすることで、最後の一瞬だけ本来の自分に戻れたのかも知れない。


この作品は、初回の印象に反して、かなり楽しめた作品だった。ストーリーがどうというわけでもなく、絵のできもイマイチだったけど、個々の人形のキャラの魅力が大きかったと思う。特に、真紅、水銀燈翠星石。どれも、突っ張って強く見せてはいるけど、実際には弱さを隠している性格。それが三者三様のバリエーションで描かれていた。それと、もちろん、声優の力に負うところも大きいだろう。沢城みゆき田中理恵はすごいね。個人的に、声優ベスト・オブ・ザ・イヤーを贈りたいものだ。

あと、この最後の2話で反則だと思ったのは、Tシャツだけを着た姿でベッドの上で頬杖する真紅と、最後、髪を下ろした真紅の姿。らしくない気もするけど、ちょっとヤバい…。それと別れのせりふ「そして、幸せなあなたのお人形…」。人形が言ったら当たり前の言明だけど、言外の意味がなんか倒錯的。