四国遍路行 第1日目

朝9時、1番札所霊山寺から歩き遍路としての旅が始まった。ジーンズの上下で手には金剛杖という遍路らしからぬ格好だけど。加賀山耕一さんの「お遍路入門 ― 人生ころもがえの旅」によると菅笠や白衣にもそれなりの実用性はあるようだし、途中、出会ったおじさんによると、白衣を着ているだけで通りで出会う人の見る目が違ってくる(実際的効用としてはお接待にあずかれる)そうなのだが、さすがににわか発心の観光遍路の身としては、気恥ずかしさの方が先に立つのであった。後で出会った若い遍路たちを見ると、袋だけ提げたり、傘だけ被ってたり、白衣だけ着てたりと、結構、さまざまなんで、自分の好みでいいんだけどね。
3番まではほとんど平地で整備された車道を行くし、歩き始めたばかりなので、かなり足取りは軽かった。「いくら、普段はほとんど歩かない(自転車通勤のデスクワーク)とは言え、結構やれるかも、自分」って感じで。でも、3番から4番になると墓地や山道、あぜ道を行くルートで最後はちょっとした山登り状態。しかも、このあたりからは日差しも強くなって、汗だくだくに喉からからとかなり辛かった。絞れるほどの汗をかくのって高校以来かも…。それからは、夕方になって幾分涼しくなるまでは、汗と喉の渇きと足の重さとの格闘となった。それでも、初日に27km歩けたなんて、すごいやん、自分 (^^)。
辿る道は基本的に、へんろ道保存協力会の地図にある昔ながらのへんろ道を歩いている。そのため、墓地やあぜ道、果ては人ん家の端っこみたいなとこも歩くのだけど、何千何万という昔の遍路たちと同じ道を辿っていると実感できてなかなか楽しい。85年前、「娘巡礼記」の高群逸枝もここを通っていったのかぁと一人、感慨にふけったり(笑。ただ、このへんろ道の欠点って、道沿いに店の類いがほとんどないこと。徳島の田園地帯だから、コンビニとかは大きな道路沿いにしか(それも少ない)ないのだ。まぁ、まがりなりにも修行の身、誘惑が少なくていいと思えなくもないが、さすがに体は言うことを聞いてくれない。
5番札所地蔵寺では、地元の女子中学生たちのアンケートを受けたけど、その中で、お接待を受けましたかというのがあった。お接待というのは、遍路道沿いの人たちが遍路(特に歩きの)を見ると、お金や果物等をあげる習慣。場合によっては、車で次の札所まで送ってあげたり、はたまた一夜の宿を提供したりということもあるらしい。今日の自分には何にもなかった。それを期待してしまうのはえげつないけど、死ぬほど喉が渇いていたときにはやっぱり「誰か水をくれー」と思ってしまう。それでも、何にも貰えなかったけどね。物は貰えないんだけど、道ですれ違う人たちの中で挨拶してくれる人は数人いた。「暑いのに御苦労さま」とか「がんばりやー」とか。一人黙々と渇きと苦痛に耐えながら歩いていると、そういう声をかけてもらえるだけもすごく嬉しかったよ。世の中、捨てたもんじゃないじゃんって…。
どこまで歩けるか分からなかったので旅館の予約をしていなかった。とりあえず10番まで歩いてその近所の民宿に飛び込みで入ろうと。ダメだったら野宿でもと最初は思ってたんだけど、この界隈って駅とかもないし、野宿すらできる様子じゃない。結局は飛び込みで入った民宿に空きがあって泊まれたんだけど。空きがあるっていうか、シーズンじゃないみたいでガラガラだった。自分と、再会した自転車少女と。それでも地獄に仏状態なのは言うまでもない。
一日目は徳島の田園地帯を行った印象。たんぼ、たんぼ、たんぼ。蛙は鳴くし、トンボも飛び交う。なんだか、自分の田舎の風景がダブって見えて懐かしかった。明日は、10番を皮切りに、10km先の11番、そして山道を12km行く、別名遍路ころがしの12番…。大変そうだ。

今日の行程

ポイント到着時刻次までの距離
1番霊山寺 9:001.2km
2番極楽寺 9:452.5km
3番金泉寺10:254.9km
4番大日寺11:452.0km
5番地蔵寺12:355.3km
6番安楽寺14:151.0km
7番十楽寺14:554.2km
8番熊谷寺16:052.4km
9番法輪寺17:003.3km
宿屋17:550.5km
所要時間移動距離総移動距離
8h55m27.0km27.0km