1番札所 霊山寺

徳島駅に着いたのが16時前。宿泊先を探すにもまだ時間が早いので、1番札所霊山寺を見ておこうと思って行ってみた。徳島駅から15分あまり。吉野川を渡り、田園広がる中を行ったところにある板東駅はかなり寂れた印象の駅だった。札所の沿道だから、昔は旅の宿場だったんだろうなと思わせるような古い家並みも残ってはいるけど、今を感じさせる雰囲気ではない。
しかし、5分あまり歩いて右に曲がり、霊山寺を突き当たりに見やる参道へと足を踏み入れると、そこには数軒の民宿が軒を連ねていた。やはり、札所へのお参り客、観光客を当て込んだ門前町は形成されているようだ。この時期、団体客もいないようで、通りすがりに、民宿のおばちゃんから、今日の宿は決まっているかと声をかけられる。今日は徳島まで戻ってビジネスホテルにでも泊まろうと思っているけど、空き室がなくてもここまで戻ってくれば何とかなりそうだ。
1番札所 霊山寺の門は遠くからでも立派な様子が感じられたけど、中に入ると思ったよりこぢんまりとしていた。橋を渡って正面に本堂、右手には大師堂。午後5時前という時間からか、参拝客はほとんどいない。自分と、初老の男性、それと幼児を連れた女性だけ。もっと団体客でも多いのかと思っていたので、正直、拍子抜けした。
本堂の一隅には遍路グッズ売り場があり、さっきのおじさんがグッズを買っていた。納め札に納経帳、頭陀袋等、一通りのグッズをそろえている。このおじさんもこれから歩いて回るらしい。どういう願いがあるのか、ここにもまた一人、結願に向けて歩き始める人がいる。帰りがけ、20代の女性とその両親らしい初老の男女が、寺門で一礼してから中へ入って行くのを見た。彼らも何等かの思いを抱えているようだ。
寺社とはそもそも自らの思いを祈る場所だけど、ここには88ヶ所までも巡らねばならないほどの願いを抱えている人達の思いが詰まっている。なんだか、そういう感じがした。