「おれは非情勤」 東野圭吾

小学校を渡り歩く非常勤講師が主人公の話6編と、小学生が主人公の話2編からなる短篇集。全部、学研の「5、6年の学習」誌に掲載されたものなので、ジュブナイルという分類になるのだろうけど、前者の非常勤講師シリーズに関しては、舞台設定やトリックはやや小学生を意識したものだとしても、ストーリー的には十分に大人も楽しめる内容だった。後者の方は、ずっこけ三人組シリーズっぽい雰囲気だけどね。
解説にも書いてあって確かにそうだなと思ったんだけど、この非常勤講師シリーズは、ハードボイルド物を目指している感じだった。チャンドラーフィリップ・マーロウ的というか。ただ、人間臭さがさらに削ぎ落されているような気がして、主人公のイメージが湧きにくいのが欠点かな。
話の作り方の巧さは、やはり東野圭吾らしい。小学5、6年生を相手に、難しすぎるわけでもなく、子供騙しというわけでもない事件を設定して、これだけの長さできちんとまとめ上げてるのは流石。それぞれの話の最後には、教訓めいたメッセージを主人公に言わせているのは、いかにも児童誌という印象もするけど、このハードボイルドな主人公に言わせればそれほど説教臭くもないしね。子供たちって大人の嘘を見抜くのもすごく上手いと思うから、これくらいアウトローな先生を設定した方が説得力はあるのかも。
大人も十分に楽しめる作品であるのは間違いないけど、積極的におすすめするほどじゃないかな。他に読んだ方がいいと思う東野圭吾作品はいっぱいあると思うしね。ジュブナイル的雰囲気が好きな人にはいいと思う。