「最終兵器彼女」 高橋しん

高橋しんって、ぜんぜん、読んだことなかったんだよね。基本的に普通なドラマを漫画に求めていない人だから、「いい人」みたいな話(って言っても内容は知らない)をわざわざ漫画で読まなくてもいいじゃんって思ってたんだよ。それが、去年だったか、BSマンガ夜話でこの作品が取り上げられてるのを見て、その設定の凄さにちょっと意外に感じたんだ。こういうのも描く人だったんだって。

今年四月になって、そのアニメ版の放送が始まり、その第1話を見て、これはほんとに凄い話だって感じた。第1話のラストシーンはほんと衝撃的だったよ。何の変哲もなかった平凡な高校生の日常に、突然、降って湧いたような戦争の勃発。そしてその瓦礫の中から現れたのが、シュウジの平凡な彼女だったはずのちせ。折りしも、4月の頭ってイラク戦争の真っ只中で、戦争の不条理な現実に敏感になっていたせいか、まさしくタイムリーな内容にぞくぞくするような感動を覚えたよ。その週末、漫画全7巻を読みつくした。そして、しばらく放心した。その後、アニメは録画だけして、第2話以降、まだ見ていない。今日、最終話を迎えるはずだから、この週末に一気に見てしまおう。

昨日、BSマンガ夜話の再放送があって、偶然というか必然というか、この「最終兵器彼女」の回が放送されていた。漫画を読んだ後で、今回、改めて見てみると、それぞれのコメントにもいろいろ共感できるものも多かった。実は、漫画にはちょっと違和感を感じてたんだよね。別になぜ戦争してるのか気になるっていうレベルの違和感じゃなくって、シュウジとちせが迎えた結末に対する言い知れぬ違和感。マンガ夜話で誰かが言っていた母胎回帰説は漫画を見てるときにも感じたけど、自分が違和感を感じたのは、終わりの方でちせから人間らしい感情が失われていって、最後には意思なき神のような存在へと変化するようになるところ。人間らしい感情が失われていく中で、時おり、ちせだった頃の思いが表れるシーンを見てると、アルジャーノンにも似た悲哀を感じてすごく切なかったのに。人の思いの失われた全き平穏なる神に向けて男が母胎回帰が結末じゃ、ちせのあの人間らしい思いはどこに行っちゃったんだよって、逆に悲しくなってしまった。やっぱり、男性作家の作品なのかなって。

アニメの方はどう結末を付けてるんだろう。声で魂を吹き込まれたちせが、より人としての思いに執着してくれてることを期待したいな。兵器になるために生まれたわけでも、そしてシュウジのために生まれてきたわけでもないんだから。

【追記】

  • 最初、ちせを「知世」って書いてたけど、知世はPapa Told Meの方だった…謹んで訂正 (^^;;