「ロード88」

先日、ちらっとこの映画の名前を耳にした時は、お遍路の話ということで、てっきり「Route88」という小林キユウのルポの映画化なのかと思っていた。で、いつか機会があったら見に行こうかと思っていたのだけど、今日、たまたま、長谷川初範のインタビューをテレビで見て、もう公開していることを知る。
遍路の映画ということしか知らなかったため、行く前にちょっとネットで調べてみると、白血病の少女が遍路に出るという話。で、主演がBOYSTYLEというアイドルユニットの一人、村川絵梨という人らしいということが分かる。小林キユウのルポとも関係ないようだし、主演も全く知らない人だったが、遍路ネタというだけでとりあえず見に行く。

渋谷はシネ・アミューズという、以前、「光の雨」を見にきたミニシアター。客層は中学生くらいから、OL、親子連れに老人までと幅広い。中学生女子はポルノグラフィティの誰か目当てだったよう。こんな単館公開のマイナー映画、各人、様々な思いで見にきてるようだ。
あらすじは、白血病の少女がスケボーで88カ所巡りをする途中、電波少年みたいに無銭88カ所巡りをさせられている落ちぶれ芸人や、犯罪に加担させられてヤクザと警察に追われている男と出会いながら、彼らに生きる希望を取り戻させるというもの。そういうわけで、周囲の人達の物語が多く描かれるため、主人公は彼女というよりも、生きる希望を取り戻した周囲の人達な気がした。その他、自分を捨てて出て行った母親との再会があったり、病気の彼女の結末もああいう感じだしと、厚生労働省文化庁推薦なだけはあるかな。
というわけで、日曜午後の2時間ドラマとしてありそうな内容という印象を持った。新聞のテレビ欄で、爽やかな感動を呼ぶ、とでも形容される、そういう感じのドラマ。主演はアイドル(演技は十分うまかったけど)だし、アミューズ所属のタレントや役者がチョイ役で次々と出てくるしで、見ながら、一体、何を意図して製作された映画なのかと考えてたけど、結局は骨髄バンクのドナー登録の啓蒙ということだったみたい。
と、まぁ、否定的なニュアンスで書いたけど、自分としては見に行って良かったと思った。村川絵梨もちゃんとした演技してたし、十分、かわいかったし。それに何より、去年の夏、自分が辿った遍路道の光景を再び見れたことは、懐かしかったし。ただ、そういうのがどうでもいい人は見るまでもないでしょう。
あと、最後に流れてた古瀬陽子の歌は良かったな。初めて知ったけど、11/18に吉祥寺曼荼羅でライブがあるようなので、見に行ってみようか。
http://www.clutch-meet.net/artist/kose/

去年、夏休みを利用して1週間あまりで、徳島の1番霊山寺から室戸岬の24番最御崎寺まで歩いてきた。スケボーも電車もバスも使わずに、全くの徒歩で250キロあまり。途中、山道で雨に降られて夏にも関わらず寒くて震えたり、炎天下、残りの水を気にしながら自販機を探し回ったり、室戸岬までの海岸線100キロで大雨に見舞われ、全身ずぶぬれで息も絶え絶え宿屋にたどり着いたりと、散々な目にもあったけど、得たものもすごく多かった気がする。映画の中ほど、多くの出会いがあったわけじゃないけど、少ないながらも人との出会いは貴重だったし、人は一人で生きているわけではないということを、文字通り体感できた旅だった。
遍路の白装束は死に装束でもあるらしい。それだけに、遍路をしている人は、より生死を意識することも多いはず。自分の足で辿っている人となれば、なおさらのこと。この映画の中で、彼女に癒された人々も、白血病の彼女を想ってというよりも、それまでの遍路でそういう共感の下地ができていたからじゃないかと思ったりもした。この映画を見に来た人の多くはただのお涙頂戴ドラマかと思うかも知れないけど、実際に歩いて見た者からすると、四国のどこかでこうして癒されている人がいるとしてもなんら不思議なことじゃない気がするんだよね(かなり好意的な見方だけど)。