「とわにみるゆめ。」 三浦蘘冬

たまたま、先日のrefererに「おつきさまのかえりみち(感想)」を検索してきたのがあって、それでちょちょっとググってみたところ、最近、この2作目が出てるってのを知った。あるネット書店のコメントに「18禁」じゃないなんて書いてあって、「おぉっ、とうとうエロじゃないとこで勝負するのかっ」と思ってたんですが、今日、買って見たところ、やっぱりエロ系でした…ふむむ。
あらすじ:昭和20年前後を思わせる時代、何らかの理由で追われている少女ロボットがかくまってもらった浮浪児の少年に心を寄せていく。自分であることを許されなかった少女、その少女の代理となるため宿命づけられた少女。少女が作られた本当の理由が明らかになる中、ヒトでないモノが人であろうとする切なさを、彼女がなくした古い絵本を通して寓話的に描いていく。
あいかわらず、ノスタルジア感じさせる世界と少女の痛々しさの描写はうまいです。内容の割には淡々とした描き方(H系以外は)なんだけど、ある民話を重ねていたり、ロボットたちの名前のエピソードとか、空と夢への少女の憧れが基調に据えられているあたりも雰囲気作りにすごく効いている。
前回の作品が短編集で、次には長編(H抜き)を見たいと思っていたのが本作で叶った格好になったのは嬉しいんだけど、倫理的にもSF的にも面白い素材を十分に扱いきれていない点がちょっと残念だった。ただ、この人の作品は論文的というよりも抒情詩に近いものなので、作風からしてそういう要求をするのは的外れな気もするけどね。