「プラネテス」1〜3 幸村誠

小さい頃、星を見るのが好きだった。買ってもらった望遠鏡で、夜毎、いろんな星を眺めてた。田舎の夜空にはまだ星がいっぱい残っていた頃だった。その頃、抱いていた将来の夢が実現していたなら、今頃、ハワイかヒューストンで、星を眺めるか、ロケットを眺めるかしていたはずなのになぁ…。残念ながら途中で転向しちゃったから、相変わらず、こんな日本なんぞで生活してるけど。
この「プラネテス」を読んで、昔、そういう夢を持っていたことを思い出した。日本の宇宙開発は最近、夢も希望もないから、宇宙に憧れ抱く子供は少なくなってるのかも知れないけど、昔、宇宙は見果てぬ夢の象徴だったんだよね。
この作品、今のところ3巻まで出てるけど、話はまだ終わってない(不定期連載っぽいからいつ終わるか分かんないけど)。この3巻までのあらすじは、宇宙のごみ回収屋の八郎太(ハチマキ)がまだ誰も到達していない場所を求めて木星探査クルーになるとこまで。1巻、2巻が宇宙ネタ中心の科学的、SF的な話が多いのに対して、3巻になると人間ドラマっぽい話になってくる。世間的には、科学的内容が受けてるようだし、自分の感想としても1、2巻の雰囲気がすごく良かった。
舞台は2070年代なんだけど、地球での生活の様子は今の時代と何ら変化なさそうなのが印象的。それに加えて、宇宙空間が一握りのエリートだけのものという程ではなく、かつ、まだそれほど大衆化されてもいないという設定で、ちょうど良いフロンティアっぽさが魅力に繋がっていると思う。今の自分たちの夢の、ちょっとだけ先にありそうな話だという親近感を持たせるから。
個人的には八郎太の弟に親近感を感じた。たとえ2070年代になっても、成層圏まで達するロケットを個人で打ち上げるのは難しいんじゃないかと思うんだけど、冒険者よりも技術者であろうとする姿勢には共感するんだよね。自分の子供の頃の思いとも重なるし(ロケットは飛ばしてなかったけど)。
来月からアニメ化されるそうだけど、そういう夢や憧れの青臭さを感じさせる雰囲気が残っているといいな。