太陽を盗んだ男

だいぶ昔に一度見てたけど、70年代の娯楽映画として再び注目されてるようなので、DVDになったのをきっかけにもう一度見てみた。
理科の教師(沢田研二)が東海村からプルトニウムを奪って原爆を作った後、ナイターの延長やローリングストーンズの武道館公演などを国家に要求していく。前半の原爆を作る過程はドキュメンタリーっぽく、一転して、後半はボニー&クライドを思い起こさせる池上季美子との逃走劇や菅原文太演じる刑事との死闘など、かなり破天荒なアクションの連続。井上尭之の音楽もカッコいい。25年近くたった今でも色あせず楽しめる娯楽作品だと思う。
のっけから、皇居に突入しようとするバスジャック犯が登場したり、国を相手に愚弄するかのような要求を突きつけたりと、権力vs.個人の対決をテーマにしてるかのような印象だけど、それも結局はブラフだったようだ。主人公が原爆を作った理由は最後まで明確にされず、それを使った国家への脅迫にも明確な目的はないけど、そんな主人公の気持ちは最後の台詞「死んだ街を殺して何が悪い」「お前が殺したがっているのはお前自身だ」に表れているように思う。受験戦争も労働団体の集会も所詮は核の傘の中、そんなけだるい平和を浮き彫りにしてしまう主人公の行動はかえって90年代以降の雰囲気に近いなと感じた。権力も既に対決相手にはなりえず、漠然とした不安は理由なき反抗となって社会全体に向けられる雰囲気。反権力もすでにギャグに思えてしまう今、そういう雰囲気を描き出しつつも、対国家という(現在から見た場合の)アナクロニズムを脱して純粋な娯楽映画に徹しているこの作品だからこそ、今なおたくさんの人に受け入れられているんだろうね。